2020011
蟹座の満月、月食、天体ショー
父親の車に乗っていたら
ふと父親が
「今日、満月なんだな」
と、ぽつりと口にした
自分から喋るような人ではないので
話しかけられただけでも
けっこうびっくりなのに
その父親からこぼれてきた言葉が満月だなんて
そんなこと気にするような人じゃないのに
ただ、そんなことを気にするような人じゃなくても
目にしてしまったら、思わず話題にしたくなるような
オレンジ色の夕陽みたいな真ん丸な月が
東の空の下から昇り始めようとしていた
こんな風に
父親と一緒にいられたりするようになったのは
ごくごく最近のこと
一緒にいても何を話すわけでもないけれども
わたしたちにしてみたら
一緒に同じ空間にいられることだけでも
昔を振り返れば奇跡みたいなことで
少しずつ少しずつ
どちらかが消えてなくなるまで
この距離が近まればいいと思っている
多分、この世界で一番
とまではいかなくても
かなりのランクで
話さなくても、近いところまでわかりあえるくらい
わたしたちは似ているから
ただ、いつか、どちらかが消えてなくなるまでに
気づまりなく、一緒に過ごせるようになれればいいと
願ったり、思ったり
できるようになったり
父親の車から降りるとき
車のキーを渡され
そのときに
いつぶりかわからないくらい久しぶりに触れた父親の手は
わたしの肌質ととてもよく似ていた
初めての一人暮らし
一番、関係性が冷え切っていたとき
指を切ったと母親に伝えたら
群馬から大阪まで飛んできてくれたことを
ふと思いだした
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